1. 島のインフラが止まった
ハワイの島々が嵐に見舞われた。SNSには悲惨な映像が流れた。電気が途絶えた。道路が断絶した。空港が閉鎖された。文字通りインフラが崩壊したような状況が、一時的に生じた。
復旧も完全には数日ではいかないエリアがあるだろう。島という地理的な条件が、孤立の深さを決める。外から支援が届くまでの間、そこにいる人たちは自分たちで生き延びるしかない。
こういう映像を見るたびに、人は防災について考える。食料、水、医療。しかし多くの場合、そこで思考が止まる。記録については、考えない。
2. クラウドは止まる
現代の記録のほとんどは、クラウドに依存している。写真はクラウドに自動バックアップされる。メモはクラウドアプリに保存される。音声はストリーミングサービスから届く。インターネットがあることを前提に、記録の仕組みが設計されている。
インターネットが止まった瞬間、その全てにアクセスできなくなる。記録を残すこともできなくなる。電気が止まれば充電もできなくなる。クラウドストレージは、インフラが正常に機能していることを前提にしたサービスだ。
嵐の中で、何が起きたかを記録したい。家族に声を残したい。この状況を言葉にして残しておきたい。その欲求は、インフラが崩壊した時にこそ高まる。しかし道具がない。
3. ソーラーバッテリーとQRコードがあれば
tokistorageの仕組みは、この状況でも機能する。スマートフォンにソーラーバッテリーを繋げば、インターネットに繋がらなくても記録を残すことができる。QRコードにデータが直接入るからだ。クラウドを経由しない。サーバーに依存しない。
電気が止まっても → ソーラーで充電できる
インターネットが止まっても → QRコードにオフラインで記録できる
道路が断絶しても → 手元の紙に刻まれたデータは残る
空港が閉鎖されても → その記録はいつか外に出られる
これはクラウドストレージにはできない所業だ。インフラの崩壊を前提に設計されているから、インフラが崩壊した時に力を発揮する。
4. 便利に流れることの代償
インフラが崩壊するような事態は、頻繁には起きない。だからこそ、人は便利な方に流れる。クラウドは簡単だ。スマートフォンのアプリは使いやすい。わざわざQRコードに音声を記録しようとする人は少ない。
しかし防災の本質は、滅多に起きないことへの備えだ。毎日火事が起きるから消火器を置くのではない。滅多に起きないから、平時に備える。その備えが、いざという時に機能する。
記録についても同じ構造が当てはまる。普段から使っていない道具は、有事に使えない。操作に慣れていなければ、パニックの中で使えない。日頃から触っておくことが、万が一の備えになる。
5. 衣食住に、記録を加える
防災の文脈では、衣食住が語られる。食料の備蓄、水の確保、避難場所の把握。これらは身体の生存を支えるインフラだ。
しかし人間は、身体だけで生きているのではない。何が起きたのか。その時何を考えたのか。どういう気持ちを抱いていたのか。それを残したいという欲求が、人間にはある。記録は精神の生存を支えるインフラだ。
嵐の中で家族に声を残した記録が、後世に残る。インフラが崩壊した時代の一市民が何を感じていたかが、1000年後の人に届く。記録というインフラが衣食住と並んで語られる日が来てほしい。
6. 防災・予防の文脈で日頃から
tokistorageを防災の文脈で捉え直すとき、消防本部との相性が見えてくる。消防の訓練思想は「平時に備えるから有事に動ける」だ。TokiQRを日頃から使う習慣が、そのまま災害への備えになる。
消防音楽隊のイベントで声を残す。地域の記録をQRコードに刻む。そういった平時の積み重ねが、インフラが止まった時の記録能力を維持する。道具に慣れているから、パニックの中でも使える。
防災訓練に記録の訓練を加える。避難経路を確認するのと同じように、記録の道具を確認する。その発想を、社会に組み込んでいきたい。
7. ハワイとtokistorageの因縁
tokistorageが生まれたきっかけの一つは、ハワイにあった。ラハイナの火災で全てを失ったお寺で、名前だけが刻まれた墓を見た。その人が残したかったものが、残せなかった痛みを感じた。それが、記録を残す仕組みを作ろうという動機になった。
今またハワイで、インフラが崩壊するような事態が起きている。縁のある人たちがその島にいる。彼らの安否を気にかけながら、tokistorageが目指してきたものの意味を、改めて感じている。
嵐が過ぎた後、人々は復旧していく。電気が戻り、道路が開き、空港が再開する。その過程で何を感じたか、何を考えたか。それを残す道具が手元にあるかどうかで、後世に伝わるものが変わる。
8. 記録インフラを再考する構造を
一人一人が個別に気づくのを待つのではなく、構造的に記録というインフラを再考する機会を作っていきたい。防災訓練、消防のイベント、地域の集まり。そういった場所で、記録の道具に触れる機会を作る。
衣食住に加えて、記録。その発想が当たり前になる日を目指している。インフラが崩壊しても機能する記録の仕組みが、日常に溶け込んでいる状態。それがtokistorageの最終的なビジョンだ。
ハワイの嵐が教えてくれた。インフラはいつでも止まりうる。だから、止まっても機能する仕組みを、止まる前から使い慣れておく必要がある。記録は衣食住と同じインフラだ。
インフラが崩壊した時にこそ、残したいものがある。だから平時から備える。