最初のノード

寄付金は使うと消える。でもインフラは使うほど育つ。不動産売却の1%が、市民社会のネットワークノードになるまでの話。

寄付金が消えていく

NPOへの寄付金は、使うと消える。食料支援に使えば食料になって消える。活動費に使えば人件費になって消える。それ自体は悪いことではない。必要なところに届いている。

ただ、寄付した人間の側から見ると、何かが残ったという感覚が薄い。領収書と、あれば活動報告書が手元に残るだけだ。来年また寄付しなければ、支援は途切れる。

寄付とは本来、一時的な補填ではなく、何かを育てる行為であるはずだ。でも現金はそれができない。現金は使えば消えるからだ。

インフラは消えない

インフラは違う。道路は走るたびに消えない。水道は使うたびに減らない。インフラは使われることで存在意義を示し、使われ続けることで価値を積み上げる。

NPOに「サーバー」を贈ることを考えてみる。余っているPCに、TokiNodeをセットアップして渡す。それを受け取った組織は、自前のウェブサイトを持ち、写真を安全に保存し、メンバーにプッシュ通知を届けられるようになる。

そのサーバーは、使われるほど地域に根付く。活動記録が蓄積される。役員が変わっても引き継がれる。ハードウェアが物理的に存在する限り、動き続ける。

現金寄付は使うと消える。インフラ寄付は使うほど育つ。

不動産売却の1%という仕組み

ある不動産仲介会社は、売却媒介手数料の1%をNPOへ寄付する仕組みを持っている。売主が指定したNPOに、取引のたびに寄付が届く。

この仕組みに、TokiNodeを組み合わせる。

寄付金の使途をサーバーに指定する。現金ではなく、TokiNodeをセットアップしたPCとして届ける。NPOは自分たちの予算を一切使わずに、情報インフラを手に入れる。売主は不動産取引を通じて、地域の市民組織のデジタル基盤に貢献したことになる。

売主 → 1%寄付 → TokiNode → NPOのサーバー → 地域メッシュへ

最初のノードの話

私が売却する不動産の寄付先として指定したのは、NPO法人伊賀の友だ。障害児の福祉支援に取り組む団体で、代表は私と妻の婚姻届の仲人をしていただいた方だ。

個人情報の扱いが最も慎重であるべき組織が、最初のノードになるかもしれない。支援を受ける子どもたちの写真や記録を、外部のクラウドサービスに預けることなく、自前のサーバーで管理できるようになる。LINEグループに流せない写真が、安全に届くようになる。

これは売却という行為が、地域のインフラに変換される瞬間だ。不動産は土地という物理的な存在で、TokiNodeが動くPCもまた物理的な存在だ。物理が物理に引き継がれる。

メッシュが育つ

TokiNodeが1台届いただけでは、まだ孤立したサーバーに過ぎない。でも同じ地域に2台目、3台目が立ち上がったとき、ノードはTailscaleを通じて繋がり始める。

自治会のノードとNPOのノードが、同じ地域のネットワークに参加する。PTAのノードが加わる。組織の壁を越えて、地域の市民組織が直接通信できるネットワークが育っていく。

そのネットワークは、誰かのプラットフォームではない。Cloudflareでも、LINEでも、Xでもない。地域に物理的に存在するPCの集合体だ。中央集権のプラットフォームが止まっても、地域のPCが動いている限り、地域の市民ネットワークは動き続ける。

ビジネスモデルとしての可能性

日本には約30万の自治会・町内会、5万のNPO法人、3万のPTAがある。不動産取引は年間数十万件起きている。売主が寄付先を選ぶたびに、どこかの市民組織にノードが届く仕組みが機能し続ければ、日本全体の市民社会インフラが静かに更新されていく。

売主は一度だけ関わり、あとは忘れていい。でもそのノードは地域で動き続け、メッシュに参加し、次のノードを迎える準備をしている。

インフラとしての寄付は、寄付した人間が関与しなくなった後も育ち続ける。それが現金寄付とは根本的に異なる点だ。

最初のノードが誰のところに届くか、それがネットワークの性格を決める。
最初に選んだのは、信頼できる人の手元だった。